看護師に必要な患者との距離感とは?

私が看護師2年目の頃の話です。

血糖コントロールの教育目的で入院された患者さんとのやり取りの中で、私は患者と看護師に必要な「距離感」というものを学びました。

いきなり距離感の話をしてもピンと来ない方も多いのではないでしょうか?

しかし、これって凄く大切な事です。

今患者との関りに躓いているや、悩んでいる方は、この記事を読んで少しでも、患者との関係性を構築する事に役立ててもらえればと思います。

看護師に必要な患者との距離感とは?

患者の概要

対象の患者さんは、糖尿病腎症により血糖コントロールの教育を行う為に入院して来た男性患者です。

私は、当時看護師2年目でした。

ある日勤の時、私はこの患者を受け持つ事になりました。

患者は、治療に対するコンプライアンスが悪い方で(ここで言うコンプライアンスは治療に必要なルールを守る事)、入院中でありながら持ち込みの食事を食べたり、血糖測定やインシュリンの注射を頑なに拒否し続けていました。

また、血糖値の推移に関して独自の価値観を持っており、いわゆる医療者から見た異常値を、患者自身は正常と認識していました。

これらの情報から、私と患者のやり取りを振り返りたいと思います。

患者に対して指導的立場で関わった

この当時私は、まだ看護師としての経験も浅く、とにかく患者の血糖値のコントロールを適切に行う事だけに重視していました。

その為、コンプライアンスの悪いこの患者さんに対して、間違いを修正する事が正しい看護だと位置づけて、「あなたは間違っていますよ。」「正しい血糖値はこうですよ。」と、徹底的に患者の価値観と反する言葉で関りました。

今でもこの関わり方が、全く間違っているとは思っていなくて、そういった介入の仕方が必要な場合ももちろんあります。

ただ、それらは、この後に述べる内容を理解した上で使い分けする必要があるのです。

患者の反応はどうだったか?

上記の様な関りに対して、患者の反応はどのようなものだったでしょうか?

患者は、酷く怒りました。

「俺は何年この病気と向き合ってると思うんだ!そんな事お前みたいな若僧に言われたくないんだよ!大体何食べたって、何したって、それで身体おかしくなるのは俺だろう?誰に迷惑かけてるんだよ。お前か?だったら他の看護師に変わってくれよ!」

衝撃すぎてはっきりと言葉を覚えています。

当時の私は、なぜそんな事言われないといけないんだろう。自分の何が間違っているのだろう。そう思って非常に悩みました。

また、こういった患者の発言に、正直腹がたちました。

確かに身体は患者のものかもしれないけど、それでも治療の為に入院しているんだから、適切な認識をしてもらいたい。そう思ったら、私の患者に対する言葉も自然と厳しいものになり、関係性は更に悪くなりました。

更に、私も患者も、お互いに苦手意識を持つようになってしまったので、その後受け持ちをする事が億劫になってしまいました。

この状況を見て、救ってくれたのは、当時の私の上司でした。

上司からのアドバイスで関係性に変化が

この時上司からあるアドバイスをもらいました。

「〇〇君はさ、患者さんの事なんとかしてあげたいと思って、近づき過ぎたんじゃないかな?患者さんはさ、私達よりも人生の先輩である事が多いでしょう?だから、患者さんには患者さんなりの、基準とか、慣れた方法ってのがあるんだよ。だから、どうして今の方法や考え方になったのか、それを最初に聞いてあげたら、患者さんも少し違った反応だったんじゃないかな?」

私はこのアドバイスの本質的な意味を理解するのに、非常に長い時間がかかりました。

ただその当時は、言われるがままに患者がなぜその様な反応を示したのか、上司の関わり方を模倣していました。

上司が患者に聞いたこと

この時上司が私の変わりに、患者に話を聞きに行きました。

すると患者からは意外な返答が返ってきました。

「男の子には申し訳ない事をした。自分はこれまで長く病気と関わってきて、自分の管理が悪かったことは分かってるんだ。だからこそ、その背景を知らない人に注意されると、分かってる!って気持ちになってしまう。それと、インシュリンの注射も、食事をしっかりと食べられた時は良いけど、食べられない時もある。気持ちの問題で。そんな時にインシュリン打ってて、低血糖で意識失ったことあるから、怖いんだ。」

患者は一生懸命病気と向き合っていました。

そして、患者自身の経験から、独自の考え方が強く残っていました。

私はこの返答を聞いた時に、素直に自分の関わり方に申し訳ない気持ちになりました。

また、もう一度患者と話しがしたいと思う様になりました。

看護師も自分の気持ちを伝える

私は、もう一度患者のもとに行き、患者の背景を知らずに指導的態度で接してしまった事を謝罪しました。

その上で再度、自分も看護師として、患者が何故コンプライアンスが悪いのか、治療に対してどんな不安を持っているのかなど、患者の事を出来るだけ知りたい旨を伝えました。

医療者と患者としてではなく、率直に一人の人間通しの関りを大切にしようと思ったのです。

患者が心を開いてくれた

上記の様なやり取りを通じて、患者は少しずつ、私に自分の事を話してくれるようになりました。

始めて診断名を聞いた時のショック、普段の食生活、気を付けている事、気を付けていても上手くいかない事、入院に対する不安、今後の生活について等。

実に多くの事を話してくれました。

私は、当初この患者に対する苦手意識を強く持っていましたが、最終的にこの患者にとって最も深く関わりを持った看護師の一人になりました。

事例を通じて学んだ患者との距離感について

私は、医療者として患者の懐に土足であがった気がしました。

しかし結果的にそれは、患者にとって不快な事であり、看護師との適切な身体関係を築くことの弊害として残ってしまいました。

看護師は、患者の価値観や人間性を理解して、直接関わりを持つ際にも、ある一定の距離感を持って、客観的に評価する必要があります。

今回であれば、アドバイスをくれた上司。

この看護師は、私と患者の関りを客観的に評価し、患者の中に入り込み過ぎず、しかし必要な情報を意図的に集める事が出来ています。

つまり、患者をなんとかしてあげたい!という気持ちは、もしかしたら看護師のエゴなのかもしれません。

患者をなんとかしたいのではなく、患者がどうなりたいのかを探りながら、適切なゴールを設定し、患者自身とそれらを共有していく事。

この事が、患者と適切な距離感を保つ為に非常に重要な事だと考えます。

看護師に必要な患者との距離感のまとめ

今回は私が過去に経験した実例をもとに、患者との距離感についてお伝えしました。

経験年数の若い看護師からすると、多くの患者さんは人生の先輩である事があります。

そういった中で、患者との距離感を適度に保ち、必要な情報の収集と、看護師の考えを直接伝える事が、信頼関係を構築する為に、重要なことであると言えるでしょう。

この記事を読んで、少しでも患者との関わりに苦手意識を持っている看護師さんが減っていく事を願っています。

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